第5章 【SS】武装探偵社入社試験
治ちゃんと国木田君は
昨日も訪れた、クリニックの前に来ていた。
中に入るなり
看護師の制止も振り切り
診察室へと入って行った。
「……貴方は昨日の」
阿部医師は驚いた表情で国木田君達を見ていた。
「阿部医師。貴方の経歴、調べさせてもらいました」
治ちゃんが切り出した。
「貴方の移動の記録です。
それと、此方が今回の事件に似た
過去の事件です」
二つの資料を阿部医師の目の前に置く。
阿部医師はパラパラとめくり、閉じた。
「私が犯人だと云いたいんですか?
偶々、私が居た地域と事件が起きた地域が
一緒になっただけじゃないですか」
阿部医師はしれっと答えた。
「…貴様。正直に答えたらどうだ!」
国木田君が阿部医師の胸倉を掴み
壁に押し付けた。
「うっ!」
「止めなよ。国木田君。
では医師、これはどうですか?」
治ちゃんはまた別の資料を取り出した。
それを見た阿部医師は驚愕した。
その資料には、人身売買の記録が残されていた。
「駄目ですよ、医師。
こんな記録を残して置くような組織と
取引なんかしては」
治ちゃんは微笑んでいた。
国木田君は黙っていた。
「もう、言い逃れは終わりですか?」
治ちゃんは更に追い討ちをかけた。
暫く黙っていた阿部医師は
急に笑い出した。
「はっはっは。まさかこんな事になるとはな。
気付かれるとは思わなかったよ」
すると、先刻まで待合室にいた子供達が
数名、診察室に入って来た。
医師を押さえつけている国木田君に絡みついた。
「ッ!?離せ!
何だこれは!?」
国木田君の力が弱まった隙に
医師は走って逃げて行った。
治ちゃんは追いかけようとしたが
目の前には催眠術にかかり
意識のない子供達が立ち塞がった。
待合室では、豹変した子供達が
一緒に来ていた親達を襲っていた。
治ちゃんは無効化しようと
子供に触れた。
異能者ー人間失格
しかし、子供達の催眠術は解けなかった。
「参ったね。直接医師に触れないと駄目なようだ」
治ちゃんは少し焦りを滲ませながら笑った。
「しょうがない」
そう云うと子供の首の後ろを叩き、気絶させた。
「国木田君。もうこれしかないようだ」
治ちゃんと国木田君は近くにいる子供達を気絶させ、
待合室にいる子供達も気絶させた。