第4章 黒の時代(終章)
私達はビルの屋上にいた。
先刻までいたマンションからは
だいぶ離れた所だ。
私の中の何かが
プツリと切れた音がした。
色々な物がぐちゃぐちゃに混ざっていた。
「あ……あぁ…」
私は崩れる様に膝をついていた。
葉月が殺した。
私達は間に合わなかった。
葉月は知っていた。
私達は止められなかった。
葉月は…葉月は……
もう何を恨み、詛えばいいのか判らなかなっていた。
気が付くと、治ちゃんは私の向かいに膝を付いて
私を見つめていた。
「何も恨む事はない。詛う事もない」
治ちゃんはまるで、私が何を考えているのか
判っているようだった。
「私達は織田作を止められなかった」
それ以下でもそれ以上でもない。と云うような目だった。
「葉月ちゃんが首領の台本を止めていたら
先に死ぬのは葉月ちゃんの方だったかもしれない。
そして、その後は……」
治ちゃんは辛そうに微笑んでいた。
「治…ちゃん…」
「さてと…、行こう。葉琉。
我々にはやらなければならない事ができた」
治ちゃんは立ち上がり
私に手を差し伸べた。
「……うん」
私はその手を取り、立ち上がった。
そして二人、また夜の空へと消えていった。