第4章 黒の時代(終章)
「……無理だよ。
私は…行けない」
返ってきた答えは、私の予想と違っていた。
葉月は静かに私を見つめていた。
「今回の事件
私なりに考えてたの。
どのような事が起きて、どうなるか。
考えてた通りになったわ。
自分で驚いているの。
ねぇ葉琉。
私はこうなる前に止める事ができたの」
葉月がなにを言っているのか判らなかった。
否、判りたくなかった。
「どう?
もう立派なマフィアでしょ?
こんな人間がもう光の世界に戻れるわけがない」
ふふっと笑いながら葉月は言った。
私は何も言えずにいた。
頭の中が白くなった行くのが判った。
思考を停止させていく。
考えては駄目だと思った。
「葉琉…もう時間だ。
そろそろ行かなくては」
治ちゃんの言葉に我に返った。
葉月を見ることが出来ず
私は振り返りバルコニーへ歩いた。
葉月が…織田作を殺したの…?
ふと、出そうになった言葉を飲み込んだ。
怒りでもない、悲しみでもない
私の中にあるのは絶望だった。
私はバルコニーから出るとき、頰に伝う温かい物に気が付いた。
これだけは、言わなければ後悔する。
最後に私は絞り出すように呟いた。
「さよなら……お姉ちゃん…」
すると後ろから姉の悲しそうな声が聞こえた。
「太宰さん。……葉琉をよろしくお願い致します」
治ちゃんはバルコニーでクスリと笑いながら
「中也によろしくね。葉月ちゃん」
と言って、私を促しバルコニーからまた夜空を駆けていった。