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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第3章 黒の時代(本章)


全てが終わっていた。

「織田作!」

治ちゃんは倒れていた友人に駆け寄った。
私も後を追って傷を確認した。

「ーッ!」

私は息を呑んだ。
弾丸は胸を貫通し、床には血だまりが出来ていた。

「太宰…葉琉…」

織田作が私達を呼んだ。
治ちゃんは織田作の隣に膝を付いた。

「莫迦だよ織田作。君は大莫迦だ」

「ああ」

治ちゃんの言葉に短い返事をした。

「こんな奴に付き合って死ぬなんて莫迦だよ!」

「ああ」

私の言葉にも微笑んで返事をした。
その笑みには、満足感があった。

「太宰…葉琉…言っておきたいことがある」

「駄目だよ!やめて!いま止血帯を…」

私は止血帯を探す。

「まだ助かるよ。だからそんな風に」

「聞け」

織田作の血塗られた手が
私と治ちゃんを掴んだ。
私は織田作を見た。

「太宰、お前は言ったな。
"暴力と流血の世界にいれば、生きる理由が見つかるかもしれない"と」

「あぁ、言った。言ったがそんな事は今」

「見つからないよ」

織田作が囁くように言った。
治ちゃんは言葉に詰まった。
悩み、考え、ようやく出た言葉を絞り出した。

「織田作……私はどうすればいい?」

そう聞いた治ちゃんは
迷子の子供のようだった。

「人を救う側になれ」

織田作は言った。

「どちらも同じなら、佳い人間になれ。
正義も悪も、どちらもお前達には大差ないだろうが…
そのほうが、幾分かは素敵だ」

「何故判るの?」

私は尋ねた。
織田作は確信に満ちた表情で言った。

「判るさ。誰よりもよく判る」

治ちゃんは真っ直ぐに織田作を見つめ
決心したことを伝えた。

「…判った。そうしよう」

「『人は自分を救済する為に生きている。
死ぬ間際にそれが判るだろう』か…
その通り……だったな…」

微笑む織田作の顔から
血の気が引いていくのが判った。
織田作は満足そうに目を閉じて、眠りについた。
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