第3章 黒の時代(本章)
目が醒めるとシャワー室でシャワーを浴びていた。
まだ頭がはっきりしない。
私はうんと熱いお湯を頭からかけた。
執務室へ行くと
珍しく治ちゃんが居た。
サボリ魔で有名な太宰治も
流石に友達の危機となれば
真面目に仕事をするのだと思った。
「おはよー治ちゃん。休めた?」
「んーー二時間くらい」
治ちゃんは机に突っ伏していた。
その時、
ーーコンコンッ
「萩原葉月です」
その声に私は、直ぐに扉を開けた。
「葉月〜有難う〜」
葉月は昨日本部に泊まった私のために
着替えとお弁当を持ってきてくれたのだ。
すると、後ろから「私にも〜」と
顔は伏したまま手をヒラヒラさせている治ちゃんが言った。
葉月は予め判っていたのか
治ちゃんの分の弁当まで用意していた。
「流石葉月ちゃん!
私のために有難う!」
「葉琉の為です」
少し食い気味に言った葉月に
治ちゃんは「相変わらず手厳しい」と言いながら
食事を続けた。
「ところで、織田作さんの容態はどうです?」
「君の想像通りだよ」
治ちゃんは直ぐに答えた。
流石、二年間組んでいただけのことはある。
これが阿吽の呼吸なのかとそのやり取りを見つめていた。
「そうですか」葉月は短く答えると
「じゃあ、葉琉。私戻るね。
もうすぐ中也も来ちゃうから。
太宰さんの分もちゃんとお弁当箱洗ってね!」
そう言って扉を開けた葉月に
「へぇ〜」/「ほぁ〜」
治ちゃんと私は同時に声が漏れた。
「……なんですか?」
葉月の少し恥ずかしそうな表情に
私達は「いえ、何でも」と答えた。
葉月はそのまま、部屋を出て行った。