第3章 黒の時代(本章)
「………退くんだ葉琉ちゃん」
「……ッ」
私は芥川君を庇う形でいた。
「治ちゃん!拷問に関しては私も失敗した!
……もうやめて」
治ちゃんは動かない。
ただ、その目は意思を曲げない目だ。
「退くんだ。
然もないと君ごと撃つ。
葉月ちゃんはこんな事しなかったよ。
…私に君を撃たさせないでくれ」
その瞬間、私は芥川君に吹き飛ばされていた。
それと同時に三発の銃声が鳴った。
「芥川くん!」
「………ッ!」
芥川君の額を汗が流れた。
「へえ、やれば出来るじゃないか」
弾丸は芥川君のギリギリ手前で静止していた。
芥川君の異能力で止めたようだ。
「哀れな捕虜を切り裂くだけが君の力の凡てじゃない。
そうやって防御に使う事も出来る筈だ」
「何度も教えたろう」と治ちゃんは笑っていた。
「是迄、この防御に成功した事は無かった」
「でも今こうして成功した。
葉琉ちゃんを守る為かい?
泣かせてくれるね」
治ちゃんは倒れていた私に手を差し出した。
私はその手を取って立ち上がった。
そして、芥川君を再び見つめ
「次しくじったら
二回殴って五発撃つ。いいね」
と言った。
芥川君は押し黙った。