第3章 黒の時代(本章)
治ちゃんは三名の死体に向き直った。
「さて、不出来な部下への教育はこのくらいにして
仕事にかかるよ。
死体を調べてみよう」
黒服の部下が戸惑いながら尋ねた。
「死体の何をお調べしましょう」
「全部だよ!決まってるだろ?」
治ちゃんは呆れながら答えた。
「アジトの痕跡を見つけ出すんだ。
全てが手掛かりだ。
この調子だと、織田作一人で全部解決して仕舞いそうだ」
黒服の部下が恐る恐る言った。
「お言葉ですが太宰さん。
あの男が迚も太宰さんや葉琉さんのご友人として
釣り合うような身分の人間とは思えません」
私はその黒服の部下を睨んだ。
治ちゃんはキョトンとした顔だ。
「本気かい君?私達と織田作が釣り合わないって?」
「はい…」
他の部下も一様に頷く。
その時、部屋の温度が急に下がった。
私の異能力だ。
部下たちは恐怖で仰け反った。
「まぁまぁ葉琉ちゃん」
治ちゃんは優しく私の肩を掴んだ。
その瞬間、部屋の温度は戻った。
治ちゃんの異能力が発動したのだ。
治ちゃんは笑いながら部下たちに言った。
「莫迦だなぁ君達。
あのね。君達のために忠告するけど
織田作は怒らせない方が善いよ。絶対にね。
もし織田作が心の底から怒ったなら
この部屋にいる五人全員、銃を抜く間も無く殺されるよ」
部下達は絶句した。
「本気の織田作は
どんなマフィアより恐ろしい。
芥川君、君なんか百年経っても織田作には勝てないよ」
「……莫迦な。
有り得ない。
太宰さん、貴方は僕をーー」
治ちゃんはその言葉を無視した。
「さぁ、仕事にかかるよ!
敵も面倒だけど早くこの抗争を片付けないと
さらに厄介なことになる」
芥川は石畳に手をついたまま
治ちゃんをただ睨んでいた。