第3章 黒の時代(本章)
店主に席を外してもらい
治ちゃんは織田作に今までに判ったことを伝えた。
「結論から言うと、彼らは海外の犯罪組織だ」
コップに水を注ぎながら
治ちゃんが切り出した。
治ちゃんが水を飲んでいる間
私が続けた。
「つい最近
日本に流れてきたんだって。
欧州の異能犯罪組織だったらしいよ」
水を飲み干した治ちゃんが更に続けた。
「異能犯罪組織がそう簡単に密入国できるほど
世の中甘くない。
何か裏があるのだろうね」
「根本的なことを聞くが
そもそもミミックのような異能犯罪組織は
政府機関が取り締まるものではないのか?」
と、織田作が言った。
確かにその通りだ。
治ちゃんは
「悪玉同士が潰し合ってくれるなら大歓迎
って感じじゃないかな」
と言った。
なるほど。と私と織田作は納得した。
「安吾については?」
織田作は次の質問に移った。
治ちゃんは少し考えてから答えた。
「武器倉庫の暗証番号情報が
安吾によってもたらされたものだと、ほぼ確定した」
私は黙って水の入ったコップを見つめた。
治ちゃんはチラリと私を見たが
すぐに視線を織田作に向けた。
織田作は治ちゃんの横に腰掛け、言った。
「なぁ太宰
誰かが安吾を嵌めるために
裏で状況を操っている可能性はないのか?」
「ゼロじゃないよ。
その可能性は常にある」
治ちゃんは
どこか自信が無さ気な声だった。
「それじゃあ、そろそろ私達は行くよ」
と言って治ちゃんは立ち上がった。
私も
食べ終わった食器を重ねて
立ち上がった。
「葉琉」
織田作に呼ばれ振り返る。
「昨日は済まなかった。
お前を責めるつもりはなかった」
昨日のこと、銃撃戦の時のことだろう。
「判ってるよ。織田作」
織田作は微笑んだ私をみて
少し安心した表情を浮かべた。
不意に治ちゃんの携帯が鳴った。
「私だよ」
しばらく電話の声に耳を傾けていたが
ニヤリと笑い「了解」といい電話を切った。
「ちょっとした罠を張ったんだが
…ネズミが罠に掛かった」
治ちゃんは「さぁ、行こう」と
私を連れて店をでた。