第15章 DEAD APPLE
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単車を走らせた所為なのか、時間が経った所為なのか。葉琉の気持ちは大分落ち着いていた。考えても仕方ないと諦めも半分である。
安吾に指定された政府施設に入ると、中では職員が物々しい空気を漂わせていた。ヨコハマが例の霧に覆われているのだ、当然だろう。
気にする事なく奥に進もうとすると職員の一人に止められた。探偵証をみせるとすんなり通されたが、どうやら安吾の元には先客がいるらしい。それも、ポートマフィアの幹部だとか。
そんな事は構うものかと開け放たれた部屋へ脚を踏み入れた。
コンコンーー
扉が無い為、傍の壁を叩く。乾いたノック音が室内に響いた。中にいた二人は同時に葉琉に視線を向ける。
一人は葉琉を呼び出した人物、坂口安吾。何故か床に投げ出されている。
二人目はその安吾を投げ飛ばした人物だろう。安吾を見下ろす形で佇む男性。ポートマフィア幹部の中原中也だ。中也からは安吾に向けられる殺気がにじみ出ていた。
「お取り込み中ごめんねぇ、お邪魔だったかしら?」
中也の放つ殺気を物ともせず葉琉は微笑んだ。
葉琉に気付くと放っていた殺気が嘘のように霧散する。中也はがしがしと頭を掻きながら「手前も呼ばれたのか」と尋ねられた。「まぁね」と答え、安吾に歩み寄り、手を指し出す。
「確かに探偵社と異能特務課は助け合ってきたけど、こんなマフィアの幹部と遣り合うのは御免だなあ」
葉琉の手を取り、安吾は立ち上がった。