第15章 DEAD APPLE
異様な程に静かだ。
深夜とはいえ、繁華街にも、遊園地にも、海に近い公園にも、人の姿は見えない。唯々、白い霧が立ち込めていた。
そんな霧に覆われた街を、葉琉は全速力で駆け抜けて行く。目指す先は探偵社。皆は必ずそこに集まると、信じていたからだ。
不意に葉琉の脚が止まる。耳に入ってきたのは獣の咆哮か…。その声のする方へ脚を進めた。
直ぐに目的の獣を捉える。その影は車のボンネットから三つの人影を見下ろしていた。その車のそばで、壊れた信号機がバチバチと音を立てた。漏電している。
直後、走りながら葉琉は手を前に翳す。
異能力ー氷島
氷の礫が獣の乗っていた車のガソリンタンクを貫く。タンクからガソリンが吹き出し、道路にこぼれた。ガソリンは漏電で起きた火花と接触し、大爆発を引き起こした。
「おまたせ」
爆発に怯んでいる三つの人影、国木田、敦、鏡花へ葉琉は笑いかけた。
「葉琉さん!」
救世主を見たかの如く、顔が輝く敦。鏡花も何処か安心した様子が伺えた。よく見ると、国木田は右腕と左脇腹の二か所に傷を負っていた。特に左脇腹から血が溢れている。
「取り敢えず、逃げるよ」
国木田に手を貸して四人は足早に現場を離れた。