第15章 DEAD APPLE
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月明かりが照らすのは一人の少女。否、見た目は少女だが立派な成人女性だ。
葉琉は昼間と同じく織田作の墓標の前で凭れかかるように座っていた。昼間と違うのは、葉琉は一人だと云う事と、唯、何も言わずに街の灯りを眺めている事だ。
暫くすると、街の灯りを遮るように、白い霧が広がっていく。それは段々と濃くなり、葉琉がいる丘まで覆い尽くした。
葉琉はこの霧の正体を知っている。異能力が分離し、襲ってくる事も。それが、自殺と取られている事も。
手を前にだし、力を込める。
異能力ー氷島
自分の想像通りの氷が霧の中を突き抜けていった。
「うん、問題ない」
自分の掌を見つめ、自分の"勘"が中ったことに安堵する。
葉琉は霧の影響を受けない。否、葉琉だけでは霧の影響を受けないのだ。葉琉の能力は葉月と同じ為、葉琉だけが霧に触れても効果はでない。つまり、葉琉と葉月の二人が霧の影響下にある場合のみ、異能力が分離されるのだ。
「葉月はマフィアの秘密通路あたりに隠れてるのかな?」
立ち上がり、うーんと躰を伸ばす。
「じゃあ、行ってくるね。織田作」
葉琉は霧の中を駆け出した。