第15章 DEAD APPLE
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葉琉は敦に連れられて探偵社に戻った。真っ直ぐ向かったのは会議室だ。
社長、春野、国木田、乱歩、与謝野、谷崎、ナオミ、賢治、鏡花が既に室内には集まっていた。敦と葉琉も空いている席に座る。
全員が席に着いたのを確認した国木田が会議室の照明を落とす。正面のスクリィンにある街の様子が映し出された。
画面の端には時刻と場所が表示されており、深夜の台湾であることを教えてくれる。暫くして、街並みに薄い靄の様なものがかかった。その靄、霧はゆっくりと濃度を増し、街を飲み込んでいく。街が霧で見えなくなったところで、映像が早回しされた。
「ーーこれは三年前に台湾のタイペイ市街にあった監視カメラの映像です。見ての通り、濃い霧が数分間という短時間で発生し、消失しています。ですが、これはただの異常気象ではありません」
映像が新たなものに切り替わる。一枚の写真だ。
「この霧の消失した後、不審な死体が発見されます。……この焼死体です」
路面に這い蹲り、真っ黒に炭化した"元人間"が、其処には転がっていた。
「ひどい」
敦の口から思わず声が漏れる。誰もが凄惨な現場に口を紡ぐ中、乱歩が駄菓子を頬張り乍、指摘した。
「この人、異能力者だね」
「仰る通りです。流石です、乱歩さん。その界隈では有名な炎遣いの異能者でした」
国木田が次の画面を映し「これは一年前のシンガポール」と説明する。スクリィンにはマーライオンの背に磔にされた男。全身にトランプの手札が刺さり、絶命したようだ。
「やはり、濃い霧が発生、消失した直後に発見された変死体です。彼は手札を操る異能力者で、腕利きの暗殺者でした」
国木田は淡々と語り、次の写真に切り替える。今度は巨大な氷柱に貫かれ絶命した女が映る。
「これは半年前のデトロイト。やはり霧の後に発見された遺体。御察しの通り、彼女は氷遣いの異能者でした」
敦が葉琉にチラリと視線を向けてきたので「大丈夫だよ」と応えておいた。たぶん、似つかわしい能力者の変死体を目の当たりにした葉琉を心配しての事だろう。