第15章 DEAD APPLE
何かを思い出す様に葉琉は暮石をそっと撫でて微笑み、太宰は表情の消えた顔で自分の手を見詰める。
「もしかして、葉琉さんの好きな人……」
「じゃないよ」
敦は喰い気味に答えた葉琉に「ですよね」と苦笑する。いつのまにか立っていた太宰が葉琉の手を引いて立たせる。そして、「友人だ」とぽつりと呟いた。葉琉の手を握ったまま、太宰は敦の方へ歩き始める。
「私達がポートマフィアを辞めて探偵社に入るきっかけを作った男だよ。彼がいなければ、私達は今もマフィアで人を殺していたかもね」
「えっ…」
すれ違いざまに告げられた太宰の言葉と、その後ろで目を伏せる葉琉の姿に敦は当惑する。慌てて振り返る敦に、太宰は冗談めかした様子で「嘘だよ」と告げた。いつのまにか葉琉も顔を上げている。
「国木田君あたりに云われて、私達を探しに来たんでしょ?」
葉琉に云われて敦ははっと反応する。
「ええ、大事な会議があるからと」
「ーーパス」
「ええ?」
太宰は一人、背中を向けて歩き出す。敦が非難がましい目で追うが、その間に葉琉が割って入った。
「ごめんね、敦君。私が出るから。ーーそれでいいでしょ?治ちゃん」
「頼んだよ、葉琉。ちょっと新しい自殺法でも試してくるよ」
「またですか?もう……」
ひらひらと手を振る太宰に、敦は呆れた声を出してしまった。