第14章 【SS】慰安旅行
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太宰と葉琉は旅館に戻るといそいそと浴衣に着替え、そっと部屋に入ろうとしていた。ゆっくりと扉を開け中を確認する。どうやらまだ宴会は続いている様で乱歩と谷崎は二人でご飯を食べている。敦と鏡花とナオミもお喋りしているようだ。奥では満腹で眠る賢治と酔い潰された国木田の姿があった。
(あれ?二人足りない様な…)
陰で覗く二人は背後に気配を感じた。二人は恐る恐る振り向く。其処にはニタァと笑う与謝野の姿があった。
「なンだい?思ったより早いお戻りだねェ」
其の儘引き摺られ太宰と葉琉は与謝野の酒に付き合わされた。社長は二度目温泉に行ったと聞いた。
普段、太宰も葉琉もお酒には強いしあまり酔潰れる事はない。しかし、与謝野に勧められ葉琉の呑む速度は上がっていく。どうやら太宰は上手く躱しているようだ。
「よさのさ〜ん。まだ呑むのぉ?」
葉琉は机に突っ伏し乍えへへ〜と笑いコップを突いている。傍には空の酒瓶が数本転がっていた。
「葉琉、そろそろ部屋へ戻って寝た方が…」
太宰が止めに入るが与謝野が葉琉のコップに更に酒を注いだ。
「国木田が寝てンだ。幾ら呑んでも構いヤしないよ」
「葉琉さん、それくらいにした方が…」
「そうですよ」
敦と谷崎も止めに入るが葉琉は止まらない。注がれたお酒を嬉しそうに呑む。