第14章 【SS】慰安旅行
ーー男湯ーー
「社長、背中流しましょうか?」
「済まんな、国木田」
「乱歩さんはボクが流しますよ」
「気が効くじゃないか、谷崎」
国木田と谷崎の行動に、何かしなくてはとタジタジする敦は太宰に顔を向ける。そして、驚きで目を見張った。
「だ、太宰さん、包帯は其の儘なんですか?」
「勿論」
太宰はにっこりと答えた。敦はそれ以上何も聞かなかった。
社長は蒸し風呂に入り、他の連中は温泉に浸かっていた。室内は見る限り貸切状態で最初は大人しく入っていたものの、段々と巫山戯る輩が出てきた。
「太宰、泳ぐな!」
「えー佳いではないかー」
「駄目だ!他人がいなかろうが規律は守れ!」
「敦君、何方が長く息を止められるか勝負しないかい?」
「僕を巻き込まないで下さい」
「ねーえー。喉乾いたー。ラムネ持ち込めないの?」
「基本的には飲食禁止です、乱歩さん」
好き勝手行う太宰と乱歩を国木田が注意していく。巻き込まれそうな敦は身の危険を感じ谷崎と賢治の方へいそいそと逃げて行く。
「敦君、露天風呂があるようなンだけど行ッてみる?」
谷崎の提案に賢治と敦は移動を始める。その後を「いーなー」と太宰が付いて来た。
「乱歩さんも行きますか?」
「僕は遠慮しとくよ」
乱歩はひらひらと手を振って国木田を送り出した。