第14章 【SS】慰安旅行
皆が丁度食事が終わる頃、店員さんが人数分のかき氷を持ってきた。苺と練乳が乗ったかき氷だ。
「探偵社の皆様でお間違い御座いませんか?」
「はい」と答えるとそのかき氷は次々に並べられていく。並べられるかき氷に国木田は訝しげに店員に伺う。
「済みません、我々はかき氷を頼んでいないのですが」
他の皆も並べられたかき氷を唯、見つめていた。
「彼方のお客様より、探偵社の皆さんへ。と云う事です」
一同、店員が示す方向へ顔を向ける。少し離れた机には此方を不機嫌そうに睨む中也と、反対に笑顔で手を振る葉月の姿があった。
「『先刻は有難う御座いました。それと、 何時も妹がお世話になっています』と伝言を預かっております」
皆、かき氷に視線を戻す。
「折角の厚意だ。頂くとしよう」
社長の言葉でかき氷に手を付けた。葉琉が葉月の座っていた机に視線を向けると、既に中也と葉月の姿は無かった。
「あの…」
「如何したの?敦君」
かき氷を食べ乍、葉琉が尋ねると敦は「一緒に居たのは五大幹部の一人、中原中也さんじゃないですか?」と恐る恐る聞いてきた。葉琉はキョトンとした顔で「そうだよ」と答えた。
「えぇ!?大丈夫なんですか!?急に襲って来たりとか…」
「大丈夫だよ、敦君。たぶん二人は任務では無く休暇だと思うし、中也も喧嘩っ早い性格でも葉月の前で無闇矢鱈に襲い掛かる程莫迦じゃないよ」
与謝野は「真逆、葉琉のお姉サンの彼氏が、あの"重力遣い"だったとはねぇ」とニヤニヤし、国木田は「彼氏…」と呟き、乱歩は食べ終えたかき氷のスプーンを咥え「まぁ葉琉と違って出来た子だよね」と言った。
「乱歩さん、何気に私ディスられてません?」
敦は「まぁまぁ」と葉琉を宥めた。かき氷を食べた後、一同は海の家を後にした。