第14章 【SS】慰安旅行
太宰が席に戻ると既に料理が運ばれていた。
「遅かったね、治ちゃん。冷めちゃうよ」
「トイレが混んでいてね」
「若しかして、中也に遭った?」
太宰は口に運ぼうとしていた咖哩の手を止めて葉琉に視線を向けた。葉琉は何故か勝ち誇るような表情を浮かべている。
「何故判ったんだい?」
「私も推理したのだよ!
先ず始めに、治ちゃんがそこまで機嫌が悪くなる様な人物に出会ったこと。そして、二つ目。国木田君達が葉月に遭った事。この二つを踏まえて導き出したのさ!」
何故か掛けてもいない眼鏡を上げる仕草をする葉琉を呆れた顔で見ていた太宰は「二つ目なんて答えみたいなものではないかい?」と告げると、葉琉は「あ、矢っ張りそう思う?」と笑った。つられて太宰も笑うと葉琉は「良かった、何時もの治ちゃんだ」と安心したように食事を再開した。
「本当、葉琉には敵わないよ」
「ここ数年、治ちゃんの横にずっと居たんだよ?少しくらい治ちゃんの変化も気付くよ。ほら、咖哩冷めるよ」
葉琉に言われて太宰は漸く昼食にありついた。