第14章 【SS】慰安旅行
ロビーへ行くと既に男性陣は着替えて待っていた。
「お待たせ」
「よし、揃ったな。では先ず、海に着いたら準…」
「ほら、行くよ国木田」
国木田の言葉を遮る様に与謝野がズルズルと引っ張って行った。その様子を苦笑いを浮かべ乍見ていた谷崎はナオミにくっつかれて顔を赤くする。
「兄様も早く行きましょうよ」
「ナナナナ、ナオミ!少し刺激が…」
掴まれている腕とは反対の手で顔を隠そうとするが、完全に指の隙間から見えている。そして、そのままナオミに引っ張られて行ってしまった。
太宰は葉琉に近寄ってくと唯々真顔で「脱がせたい」と告げる。葉琉は笑顔で太宰を投げ飛ばし、敦、賢治、鏡花を連れて海へと歩いて行った。
「わー!」
「凄い…」
「これが都会…!」
敦と鏡花と賢治は初めてだという海水浴場に目を輝かせていた。先に着いていた国木田は貸し出し用の敷物、ビーチパラソルを借りて設置していた。
「えー、我々の拠点は此処です。他のお客様も多い為、粗相のない様に。特に、太宰!」
国木田は痛そうに腰を摩り乍到着した太宰を指し「決して人様に迷惑をかけるな!」と告げる。太宰は「いやだなぁ。私が何時、人様に迷惑を掛けたと云うんだい?」とキメ顔で言い出す。国木田は太宰へ諄々とお説教を始めるが太宰は関係なしに笑っている。
その二人を無視して葉琉と敦、鏡花と賢治は浮き輪を借りに行った。
「太宰さんって海でも包帯巻いてるんですね」
「そうだね、治ちゃんは何時も巻いてるよ。あれはもう躰の一部だからねぇ」
葉琉の返事に苦笑いを浮かべる敦。鏡花と賢治は其々浮き輪を手に皆の所へ戻って行った。葉琉と敦も後に続く。
「そう云えば、葉琉さんと初めて遭った時は溺れていましたが、泳げるんですか?」
敦は悪意のない笑顔で葉琉に尋ねる。
「泳げるよ、失礼な。あの時は流れが速くて滑っただけだもん」
ぷぅっと頰を膨らまし怒る姿はもう如何見ても21歳には見えない。敦も時々葉琉の年齢を忘れてしまう程だ。敦はその姿に思わず葉琉の頭を撫でてしまった。