第14章 【SS】慰安旅行
ババ抜きはまだ続いている。鏡花が上がり、敦と谷崎の一騎打ちである。敦が2枚で谷崎が1枚、次は谷崎が引く番だ。谷崎は遊戯とは思えない真剣な表情で札を見つめる。そして、交互に札に触れると敦の表情は微かに違いが出た。これは敦の作戦なのか、あるいは唯の正直者か。谷崎は後者を選んだようだ。勢い良く引いた札を確認すると谷崎は安心したように笑顔に変わった。反対に敦はがっくりと項垂れる。
「ごめんねぇ、敦君」
「敦は推理するまでも無く顔に出てたよ」とお菓子をもぐもぐし乍乱歩が告げると更に項垂れた。
「えーえー、どうせ僕は判りやすい性格ですよ!」
「そんな拗ねンじゃァないよ、敦」
「そうですわ、敦さん!」
「…頑張ってた」
「与謝野さん、ナオミさん、鏡花ちゃん…!」と敦は神を崇めるような目で見つめる。
「でも、余りにも顔に出すぎだよ、敦君」
「ポンコツだね、ポンコツ!」
微笑む太宰と、自分を棚に上げる葉琉に敦はこんな大人にはなりたくないと心から思った。
谷崎は苦笑いを浮かべ乍、その様子を見ていた。