第14章 【SS】慰安旅行
葉琉はごそごそと鞄を漁っていた。
「与謝野さん、トランプやりません?」
「いいねェ、何賭けるンだい?」
とニヤリと笑う与謝野に葉琉は「賭けは無しで」とキッパリ断り他にも乱歩、鏡花、敦、谷崎兄妹も巻き込みババ抜きを始めた。
社長は最前列でお茶を啜っており、国木田は手帳とにらめっこしている。太宰はトランプには参加せず葉琉の手札を覗いてはニヤニヤとしていた。賢治は出発時と変わらず一番後ろで眠っていた。
「はい。上がりー」
乱歩が機嫌よく1番に抜けた。
「乱歩さんは矢っ張り強いですねぇ」
「名探偵の僕に不可能はないさ。君達が持っている手札くらいお見通しだよ」
其々の枚数は与謝野が2枚、葉琉が2枚、谷崎が4枚、ナオミが3枚、鏡花が3枚、敦が5枚だ。
次に上がったのは葉琉だ。そして与謝野、ナオミと続けて上がっていく。
「葉琉さんってお強いのですね」と何故か感心しているナオミに「それは如何いう意味かな?」と聞き返す葉琉。与謝野も意外そうだった。
「葉琉は元々、他人の顔色や視線を読み取るのが得意なのだよ。けれどそれは無意識下であって自分で読み取ろうとすると出来ないのだけどね」
太宰はぽんぽんと葉琉の頭を撫で乍笑った。今回は遊戯という事で無意識に読み取っていたようだ。葉琉は「それ言わないでよ!」と恥ずかしそうに丸まった。
「それってつまり…」
「ポンコツってことかい?」
ナオミと与謝野は秘密を暴露されて丸まっている葉琉を憐れむように見つめた。