第14章 【SS】慰安旅行
バスが止まっている橋の下を流れる川。その川の上流から脚が二本流れている。あれ、なんかデジャヴ…?
その脚は間違いなく太宰の物だった。
「……治ちゃん」と頭を抑える葉琉と「あの莫迦」と呆れ果てている国木田が居た。そして二人は敦の肩に手を乗せて「見つけた人が回収する」と告げた。敦は有無を言うことを許されずに太宰の救出へ向かった。
「いやぁ、助かったよ敦君」
バスは無事出発し、太宰は葉琉の隣に座りタオルで髪を拭いている。ゼーゼーと荒い呼吸の敦は、鏡花に背中を摩られていた。
「『助かったよぉ』ではない!何だってこんな日に川に何ぞ流れていた」
「国木田君、モノマネ上手だね」
「人の話を聞け!」
国木田は太宰の頸を両手で締め、激しく揺さぶっている。太宰は「ははははー」と笑っていた。
「それで、治ちゃんは何で流れてたの?」
「いやぁあれはね、早朝に目が覚めて散歩してたら眠くて橋から落ちてしまったのだよ」
「あははー」と笑う太宰に一同、呆れていた。
「兎に角、これで全員揃ったな」
国木田は手帳を確認し乍、眼鏡を指で直す。
「今回の旅行は社長のご友人からのご厚意によるものである!依って探偵社員としての自覚を持ち、皆粗相のない様に!」
「「「「はーーーーい」」」」
やる気のない返事がバス内に響いた。