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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第13章 華麗なる幕引きを


鏡花の言葉に太宰が言葉を発するより早く葉琉が反応した。

「…なにそれ…"元殺し屋に善人になる資格はない"…鏡花ちゃんは本気でそう思ってるの?」

太宰も葉琉と同じ人物を思い浮かべているのだろう。一瞬だけ目を伏せる。鏡花の返事がない儘、葉琉は続けた。

「鏡花ちゃん、確かに人には向き不向きがある。そして貴女には明らかな殺しの才能がある。だから貴女は探偵社員にはなれない。そう思っている。……莫迦云わないでよ。ねぇ、鏡花ちゃん。貴女はその手で何人殺したの?」

『……35人』

「たかが35人くらい何よ」

『!』

「いい、鏡花ちゃん。貴女は探偵社の凡てを知らない。自分自身の凡ても知らない。凡てを知ることは誰にも出来ないの。それをね『可能性』って云うんだよ」

太宰は葉琉の手を握った。葉琉もそれに応えて握り返す。

「…ある人は才能があるからと沢山の人を殺してきた。それこそ数え切れない程にね。彼女を変えたのは友人の死とその友人との約束。彼女は人を殺すのを止め、人を救う為の仕事をしているわ。……でもね、彼女は存在するだけで大切な人を傷つけてしまうの。たった一人の家族を…それでも、彼女は『可能性』に掛けてるの。姉を救う『可能性』に……」

太宰は葉琉の頭をぽんと優しく撫でた。俯く葉琉に太宰が続けた。

「君に契機をくれた敦君だって、元は災害指定猛獣だ。でも彼は今、その近くの空域で命を懸けて戦ってる。街を守る為にね。
鏡花ちゃん。君が望むなら殺しで生きる道を用意してやってもいい。けど、君の苦悩は君だけのものじゃない。
"成りたいモノと向いているモノが違う時、人は如何すればいい?"
生き方の正解を知りたくて誰もが闘ってる。何を求め闘う?如何やって生きる?答えは誰も教えてくれない。我々にあるのは迷う権利だけだ。溝底を宛てもなく疾走る、土塗れの迷い犬達のように」


太宰は鏡花との通信を切った。そして、別の操作を行い白鯨の操舵室と鏡花の無人機への通信を繋げた。

「葉琉、有難う。後は彼女が選択する事だ。私達も行こう」

葉琉は頷き、太宰と共に部屋を出た。
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