第13章 華麗なる幕引きを
敦は制御端末を使えば落下を止められる事を知り、それを手に入れる為に脚を進めた。
通信室に外部からの着信が入る。敦からの通信に集中している太宰に代わり葉琉が応えた。
「はい」
『ご機嫌かね、葉琉ちゃん』
葉琉の顔から表情が剥がれ落ち、直ぐ様通信を切ろうとする。その雰囲気を読み取ったのかインカムの向こうから慌てた声が聞こえた。
『待て、切らないで』
「何ですか、首領。マフィアには探偵社の作戦の邪魔をしないよう協定を結んだ筈ですけど」
『その協定だが、今部下から報告があってねぇ……守れそうもないのだよ』
「……え?」
葉琉の様子を伺っていた太宰は「やれやれ…」と呟いた。如何やら敦の方でも何か動きが有った様だ。首領との通信を切り、葉琉も敦との通信に切り替えた。
「わぁ……芥川君の独走癖は相変わらずなのね…」
葉琉の反応に太宰は「仕方ない」と敦に指示を出した。
「敦君、彼に係っている暇はない。先に進もう」
『ですが』
「大丈夫、私の云う通りにすれば問題なく逃げられるよ。先ずーー」
太宰は敦に指示を出すと通信を切った。葉琉は太宰の代わりに心の中で芥川に謝罪した。
「却説、葉琉。次の仕事だ。頼めるかい?」
「…やってみる」
太宰は機器を弄り始めた。準備が整うと葉琉に視線で合図を送る。葉琉は音声のスイッチをいれた。
「鏡花ちゃん、聞こえる?葉琉よ。治ちゃんも一緒にいる。鏡花ちゃん、聞いて。治ちゃんが特務課と交渉して取り敢えず貴女を地上に降ろせる事になったの。その無人機の操縦法を教えるね。先ずその操作盤で……」
『いい』
「…鏡花ちゃん?」
『もういい…もう私は何も…』
葉琉と鏡花の会話聞いていた太宰は無人機の操作盤の電源を切った。そして、葉琉と代わると話を始めた。
「本当の事を云うとね、探偵社には君を救助する理由が無いのだよ。何故なら君はまだ社員ではないからだ。探偵社には入社試験があり、君は未だにそれを通過していない。探偵社員として、見知らぬ人でも助ける心と強さを持っているかを験す試験だ」
『……私にはきっとその試験は……』