第13章 華麗なる幕引きを
暫くすると敦から通信が入った。
『潜入しました』
太宰は「中の様子は?」と尋ねる。
『静かです。誰も居ません………妙です、皆何処に……』
扉を開ける音の直後、別の男の声が聞こえた。太宰と葉琉は遠い声に耳をすませる。太宰は「そう来たか…」と呟き、葉琉に目配せする。葉琉は探偵社に連絡を入れ、太宰は再びインカムに耳を傾けた。
『聞きましたか、太宰さん!葉琉さん!直ぐに作戦を中止して避難しないと…』
「…敦君、よく聞くんだ。作戦に変更はない。君の手で白鯨の制御を奪取し落下を阻止するだ。それが出来るのは今、白鯨にいる君しかいない」
『太宰さん…この事態を予測していたんですね?』
「可能性の一つとしてね。それを含めて君を適任者と判断した。やれるかい?」
『…………落下を止めるには…どうすればいいんですか』
この質問は敦と対峙しているもう一人の男に向けての言葉だろう。太宰は横目で葉琉を確認した。葉琉は通信を終えたのか、太宰の視線に気付き微笑んだ。