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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第13章 華麗なる幕引きを


太宰も剥かれた林檎を頬張る。

「まぁ、そう聞こえたならそうかも知れないね。実は…探偵社員が一人、軍警に捕まっている。組合との最終決戦の前に彼女を助けたい」

「あぁ……"35人殺し"ですか。彼女は危険異能者を隔離する無人機にて拘束中と聞きましたが」

「あぁ、だから特務課に手を回して貰いたくてね。出来るだろう?」

「確かに、特務課なら超法規的な司法取引による免責も可能です。その少女が本当に探偵社社員ならば、ですが」

太宰は林檎を齧り黙っていた。安吾はフォークを置くと更に続けた。

「確かに、特務課と探偵社は協力関係にあります。しかし、社員でもない人間に特赦を与えるのは僕の権限では不可能です。………他の援助、例えば対組合作戦支援なら喜んで致しましょう」

太宰は「そうかい…また来るよ」と告げて葉琉を連れて部屋を出ようとした。

「太宰君。治療と引き換えに協力する『取引』、確かに受諾しました。だから一つ教えて下さい。正体不明の車に突っ込まれた時、何故か僕の席の緩衝嚢だけ開かなかったんですが…理由をご存じありませんかねぇ?」

太宰は振り返り、黒い笑みを浮かべた。



● ● ●



太宰と葉琉は特務課の準備した通信施設にいた。これより、敦の『白鯨』への単独潜入作戦が始まる。
太宰と葉琉もインカムを付けて準備に取り掛かる。先刻よりインカムからはスイッチを切り忘れているのか敦と谷崎の声が聞こえていた。

『心配いらないよ、敦君。ぼ…ぼ…ボクがそ…そ…操縦してるからだ…だ…大丈夫!』

超小型強襲機『夜烏』を操縦中の谷崎の声だろう。とても震えている。

「ねぇ、治ちゃん。『音声入ってるよ』って教えてあげたら?」

葉琉はクスクスと笑い乍太宰を見た。太宰も笑いを堪えている。どうやら教える気は無さそうだ。葉琉はパソコンの画面を確認すると、音声スイッチを入れた。

「谷崎君、聞こえる?間もなく白鯨の視認圏に入るよ」

『は、はい!聞こえます!うわわわわ!えっと…高度よし、排熱制御よし、あとええっとそれと………!』

葉琉は画面を確認し「大丈夫そうだね」と呟いた。太宰も頷いた。
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