第13章 華麗なる幕引きを
太宰は花束を持ち、葉琉は果物が沢山入った籠を持って病院の廊下を歩いていた。
目的の病室の前で立ち止まると太宰は勢いよく扉を開けた。
「ハァイ安吾!元気かい?」
満面の笑みで尋ねる太宰の後ろから葉琉がひょこっと顔を出し「安吾生きてるー?」と手を振った。病室の住人、坂口安吾は不機嫌そうに二人を唯、見つめた。躰中に包帯を巻き、足を石膏帯で吊っている。
「素敵な格好だねぇ。今日は善い話を持ってきたよ!安吾、林檎貰っていいかい?」
「……どうぞ」
太宰は果物籠から林檎を取り出すと葉琉に手渡し「剥いて欲しいのだけど」と頼んだ。葉琉は「仕様がないな」と林檎を受け取り果物包丁で林檎を剥き始めた。
「それでね、安吾。組合の車攻撃で負ったその怪我、探偵社で治療しよう!与謝野さんの治癒能力ならピカピカの新品に戻れるよ!」
安吾は訝しげな目で「……で、その見返りは?」と尋ねた。
「見返り?真逆!特務課と探偵社は何時だって相互に扶け合って来たじゃあないか」
「成る程……『だから今回の戦争を特務課も手伝え』と?ン!」
安吾の口に綺麗に剥かれ、カットされた林檎が突っ込まれた。犯人は葉琉だ。葉琉はニコニコと笑っている様で何処か黒いオーラが出ている。
「まぁまぁ、林檎どーぞ?」
「……有難う御座います」
フォークに刺さった林檎を一口齧り安吾は手に持った。