第12章 双つの黒と花の役割
「好きだよ、葉琉。友達としてではなく、また特別な感情だ」
「否、待って治ちゃん…私…」
顔を真っ赤にし、おろおろと視線を泳がせている葉琉に太宰は「葉琉は私の事嫌いかい?」と尋ねた。
「好きとか…嫌いとかじゃなくて…その……」
太宰は葉琉の顔を上げるともう一度接吻をした。
「!?」
顔を離すと「如何?」と尋ねる。
「如何って…」
「これからは、『友達』としてではなく『恋人』として一緒に居て欲しいのだけど、如何だい?」
葉琉自身、今までの太宰の言動に意識した事がない、と言えば嘘となる。だが、それは全て太宰の『冗談』であり本気で捉えた事は無い。それでも、自分の中で『名もない募る想い』が有る事は判っていた。そしてその『想い』も今、正体が判ったのだ。
「治ちゃん…本気なの?」
「私は冗談で自分の身を削る事はしない。知ってると思うけど?
それで、葉琉の気持ちが知りたいのだよ」
「……私は治ちゃんが好き…だと思う」
「随分とはっきりしない返事だね」
「ごめん…でも、治ちゃんとは一緒に居たい」
太宰はにっこりと笑う。
「それが返事、という事でいいかい?」
葉琉は赤い顔を隠す様に頷いた。