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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第12章 双つの黒と花の役割


ゆっくりと離れる太宰の表情には悲しげな笑みが浮かんでいた。

「『私が居なければ』何て云わないでおくれ。今の私が此処にいるのは織田作の言葉と、一緒に居てくれた葉琉のお陰だ。葉琉が居なかったら私はもうこの世には居なかったかもしれないね。それ程、葉琉には救われたのだよ」

「でも…私は…」

葉琉は俯き、唇を指でなぞった。髪から覗く耳は真っ赤になっている。「狡いよ、治ちゃん」と呟く。

「葉月ちゃんは唯自分の死を受け入れる心算はないようだよ。【漂泊者】に耐え、『氷島』を譲渡し終えるという可能性もある訳だ。その為に、葉琉にも出来ることがある。それは更に『氷島』を極めること。まだその能力は成長する。それを成長させ、少しでも1回で渡せる能力の量を多くすればいい。葉月ちゃんも少しでも自分の能力を成長させ、葉琉に渡せるようにとする事だろう」

葉琉はパッと顔を上げ「葉月は助かるの?」と尋ねた。

「葉琉に嘘は付けない。あくまでそう云う可能性が有る、という話だ」

「私にも…やれる事がある」

葉琉は葉月の為に自分の能力を成長させる事を決めた。太宰はそんな葉琉の様子を伺って「ねぇ葉琉」と声を掛けた。

「何?」

「私が葉琉を好きだと言ったら、驚くかい?だからこれからも一緒にいて欲しいと言ったら、一緒に居てくれるかい?」

「……え?」

葉琉は驚いて顔を上げた。

「治ちゃん、こんな時に冗談なんて…」

「冗談ではないよ。私は何時も本気だったのだよ。葉琉がそうと気付いていなかっただけでね」

驚いて言葉を失っている葉琉に太宰はもう一度、はっきりと言葉にした。
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