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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第12章 双つの黒と花の役割


太宰は再びゆっくりと歩みを進めた。

「先ず、黙っていて済まなかった。私自身、確信を得られたのは昨日で、それまでは唯の推測でしか無かったのだよ」

背中から顔を横に振る感触が伝わった。太宰は一つ一つ選ぶ様に丁寧に言葉を紡いだ。

「『氷島』は元々、葉琉の能力なのだそうだ。だが、その力は幼かった葉琉には制御出来ず命の危険もあると判断され、二つに分けられた」

「…それが葉月の能力『氷島』なんだね」

太宰は頷いた。葉琉は「そっかぁ…」と力なく呟く。

「葉月はずっと、私を助けてくれていたんだね」

「そうだね。葉月ちゃんの能力は何れ葉琉に戻るそうだ。その時、葉月ちゃんの能力は消える」

葉琉はもう一度「そっか」と呟いて「それで葉月も解放されるんだね」と安心した様に呟いた。太宰は返事をしなかった。もう一つ、伝えなければならない『可能性』の話があるからだ。

「治ちゃん?」

「葉琉、次から話すことは可能性の話だ。異能力の譲渡はある条件下で発生するようたが、君達のように異能を分けた例は存在しない。だから、あくまで可能性の話なのだが…」

太宰は一度言葉を切った。言え、言うんだと自分を鼓舞する。

「葉月ちゃんの寿命は『氷島』によって削られている。更に、能力譲渡の術である【漂泊者】に葉月ちゃんの躰は耐えられていない。つまり…」

「能力を貰おうと【漂泊者】を使っても葉月の躰が蝕まれ、其の儘にしておいても能力自体が葉月を蝕むという事…?何それ…葉月が何したっていうの…」

葉琉は一度、息を吐き出すと「…私の所為か」と呟く。その声にはもう力がない。

「それは違う!能力は誰にも選べない。葉琉だって好きで大きな力を手にした訳ではないだろう」

葉琉は太宰の背中から降りる。ふらふらと数歩後ずさると俯き乍ぶつぶつと呟き始めた。

「葉琉…?」

「それでも…私が居なかったら葉月は…」

辺りの空気が冷たくなっていく。葉琉の周りを取り巻くように細かい氷の礫が出現した。これは、異能力の暴走だ。
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