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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第12章 双つの黒と花の役割


ーー戦況は直後に変わった。

氷の砕ける音と共に触手が太宰の石膏帯を引き千切り、間髪入れずにもう一撃飛んで来る。葉月が氷の柱を出し、太宰と葉月を守るように囲う。しかし、触手は氷の柱を砕き太宰と葉月を吹っ飛ばし木に激突した。

「葉月!」/「治ちゃん!」

中也と葉琉は先程磔にした男に視線を移した。長髪男は触手の塊の様な形へ姿を変え、どんどん大きくなっていく。高さは周りの木々をゆうに超えていた。

「なに…これ…」

葉琉は葉月達の処へ駆け出そうとする中也の裾を掴んだ。中也は「ンだよ!」と振り向き目の前の光景に一瞬、言葉を失った。

「おいおい…こりゃ本気でどういう冗談だよ…?」

「……」

中也はハッと我に返り、葉琉の腕を掴み走り出した。

「呆けッとすんな!」

葉琉を引っ張り乍、太宰と葉月の元へ向かった。

「葉月!太宰!」

「私は大丈夫、太宰さんが庇ってくれたから。でも、太宰さんが…」

「治ちゃん…!腕が!」

葉琉がハッと息を呑むと中也も目を見張った。
太宰は石膏帯の付いていた腕を抑え絞り出す様な声で「葉琉、中也……死ぬ前に…聞いてほしい事が…」と告げる。

「やだ…!治ちゃん!」

「な、何云ってやがる!手前がこんな処で…」

「ばぁ!」

太宰の掛け声と共に引き千切られた石膏帯の処から隠していた腕を出した。葉月は「矢っ張り…」と呟く。
葉琉は無言で中也に太宰を差し出し、中也は太宰の胸ぐらを掴み高々と持ち上げ拳を振りかざす。太宰は「待ち給えよ、君達」と両手を上げている。

「やだなぁ。怪我の身で戦場にでるなら、この程度の仕込みは当然だよ」

「手品してる暇があったら、あの悪夢をどうにかする作戦考えろ!」

中也はビシッと人の形など保っていない触手の塊を指した。
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