第12章 双つの黒と花の役割
組合の残りの連中は主力が消えた所為か慌てふためいている。
「チッ、ぞろぞろと目障りな連中だなァ」
言葉を言い終わる頃には中也は連中に向けて突撃していた。その後を追う様に葉琉も敵に向かって行く。
「葉琉、この間みてェな真似はすンなよ」
「判ってる」
二人は次々に敵を倒して行った。
最後の敵を倒す直前、中也が叫んだ。
「手前等ァ、ほのぼのすンじゃねぇ!働け!」
後ろを向くとまるで親の様な眼差しで此方を見ている、太宰と葉月の姿が在った。
「全く……ここ数年で最低の一日だよ。葉月ちゃんだけなら兎も角、何故中也まで…」
「何で俺がこんな奴と……働かねェなら葉琉だけ寄越せよ」
ぶつぶつと文句を言い合い乍、太宰と中也は小屋の取手に手を伸ばした。
「俺の隣を歩くんじゃねえ」
「中也が私の隣に来たんじゃあないか」
睨み合う二人。その様子に呆れ返った葉琉は二人の間に入り扉を開け中に入る。葉月も続けて中に入った。そして、太宰と中也に振り向き「喧嘩するなら二人共帰りますか?」と睨んだ。
「「……済みません」」
二人は渋々中に入ってきた。中はもぬけの殻になっており、既に葉琉が地下へ続く梯子を見つけていた。
「太宰、『ペトリュス』って知ってるか」
「目が飛び出るほど高価い葡萄酒」
「手前が組織から消えた夜、俺はあれの八九年ものを開けて祝った。そのくらい手前にはうんざりしてたんだ」
「それはおめでとう。そう云えば私もあの日、記念に中也の車に爆弾を仕掛けたなあ」
「あれ手前か!」
「一寸、二人共」
「早く降りておいでよ」
先に梯子を降りていた葉琉と葉月は下から二人を呼んだ。中也は梯子を使わずに飛び降り、太宰は梯子を使いゆっくりと降りてきた。
「ああ、気に食わねぇ。太宰の顔も態度も服も全部だ」
「私も中也の全部が嫌いだね。好きなのは靴選びの感性くらいだ」
「あ…?そうか?」と中也は立ち止まり自分の靴を確認する。
「うん。勿論、嘘。靴も最低だよ」
「手ッ前ェ!」
中也の蹴りは太宰に中る事無く、虚空を裂く。
「無駄だよ。君の攻撃は間合いも呼吸も把握済みだ」
「加減したんだよ。本気なら頭蓋骨が砕けてたぜ」
「そりゃ、おっかない」
四人は更に続く階段を降りた。