第12章 双つの黒と花の役割
辺りは暗く、静まり返っていた。月明かりだけがその場にいる二人を照らしている。太宰と葉琉はとある小屋の前で足を止めた。
「此処がQの監禁場所だね」
太宰は「ふむ」と建物を観察する。直後、全方位から人工的な光で照らされ、太宰と葉琉は思わず目を細めた。草木を掻き分ける音と共に組合の連中と思われる男達が銃を構えて飛び出してきた。「こんばんは」と見覚えのある顔が現れる。組合の植物男だ。
「うちの作戦参謀は敵行動の予測が得意なもので」
太宰は「罠か」と態とらしく笑い、葉琉は「やっとでてきた」とボソリと呟いた。蹴散らそうかと前に出ようとした葉琉は脚を止めた。
「葉琉?」
「なんか私が出なくてもいいみたい」
その瞬間、勢い良く岩の塊が落ちてきて、組合の男に直撃した。
「あ、これは予想外の登場方法だわ」
ははっと苦笑する葉琉の横で太宰ははぁと溜息を吐いて頭を抑える。
岩の陰から人影が飛び出し、組合の連中はその人影に向けて発泡した。弾は中ることなくぱらぱらと落ち、尚も太宰と葉琉に向かい歩みを止めない。
「最初に云っとくがなァ、この塵片したら次は手前等だからな?」
聞き覚えのある声、見覚えのある帽子。正体はポートマフィア幹部、中原中也だった。太宰は今にも帰りたいという表情を浮かべている。
「あーあ、矢っ張りこうなった。だから朝から遣る気出なかったのだよねえ……」
「諦めなよ。来てしまったものは仕様がないよ」
「バカな!こんな奇襲戦略予測には一言も…」
植物男が手から蔓を出す。
「はい。悪いけどそれ禁止」
太宰が軽いノリで男の肩を叩くと蔓は消えていった。
「なっ…異能無効化!?」
そして、太宰を乗り越える様に植物男に向かって中也が蹴りを入れる。男は凄まじい勢いで飛んで行った。
「あぁ、最悪だ最悪だ」
「私だって厭だよ」
「お二人共流石ですね」
突然後ろから現れた葉月に葉琉は「え、葉月何処から!?」
と驚きの表情を浮かべた。