第12章 双つの黒と花の役割
ーー翌朝、探偵社事務所
太宰はソファの上でだらし無い格好で情け無い声を上げていた。葉琉は向かい側に座り呆れ顔でその様子を見ていた。
「はぁ〜〜〜〜〜〜遣る気出ない」
「朝から壊れた喇叭のような声を出すな太宰」
国木田は矢張りお冠だ。
「今は何言っても無駄だよ、国木田君。ずっと此の儘だもん」
「私は今ねぇ、誰かと対話する気力もないのだよ国…なんとか君」
「不燃ゴミの日に出すぞ、貴様。お前と葉琉と葉月さん、そして敦の連携で街は壊滅を免れた!その翌日に何故そうなる?」
太宰がダラダラと答えない代わりに、葉琉が答えた。
「それがさ、社長から頼まれた次の仕事の所為みたいで」
国木田も「そう云えば」と思い出したようだ。
「昨日、社長と敦が豪く話し込んで居たが…その件か?」
「そうだ」
後ろからの声に国木田、葉琉、太宰もが姿勢を正す。その声の主は社長だった。
「太宰、葉琉、マフィアの首領と密会の場を持つ件は進んだか」
「手は打ってますが…」
「マフィアの首領は来ると思うから」
「来るでしょう。社長を殺す、絶好の好機ですから」
葉琉は「それに」と付け加えた。
「今回、個人的にとはいえ架け橋が出来ましたから」
社長は身を翻すと「構成員同士で延々血を流し合うよりは善い」と言って去って行った。事情を知らない国木田は恐る恐る太宰と葉琉に尋ねた。
「……おい太宰、葉琉、説明しろ。マフィアの首領と…密会だと?」
「そうだよ。敦君の着想から豪く大事になったものだ。幾ら組合が最大の脅威になったとは云え…」
「待て待て待て!何が何やら…第一、何故お前等が密会の手筈を整えている?」
「「私達、元マフィアだから」」
同時に答えた後に葉琉は「国木田君以外は皆知ってると思うよ?」と続けた。
「ま、待て!ではまさか…葉月さんは…」
「「マフィアだよ」」と太宰と葉琉は笑顔で答えた。国木田の反応がない。
「あれ、国木田君?」
葉琉がツンと突くとそのままばたりと倒れてしまった。太宰は「葉月ちゃんに手を出したらちびっこマフィアが来ちゃうよ」と言ってお腹を抱えて笑い出した。