第12章 双つの黒と花の役割
「それで、何故声を掛けてくれなかったのだい?」
太宰は微笑み乍尋ねた。葉琉は手摺りに両腕を乗せて体重を預けた。
「別に。何か話し掛けちゃいけない気がしただけだよ」
「妬いてるのかい?可愛いね」
「そんなんじゃないよ」
ぷいっと外方を向く葉琉に太宰はまた笑みが零れた。
「本当に可愛いねぇ、葉琉は」
「それで、何話してたの?」
太宰は一度きょとんとした表情を見せたが、直ぐに微笑み「それはね」と話し始めた。
「明日、ポートマフィアとの密会が行われる事になったのだよ。その伝言人を姐さんと葉月ちゃんに頼んでね」
「やっぱり協力するの?」
「森さん次第だよ」
葉琉は「ふーん」と返した。
「それと明日の夜、Qの奪還作戦を行う。葉琉にも一緒に付いて来て欲しい」
「それは構わないよ」
「もし、一時的な協力が結べるなら、その作戦には葉月ちゃんが投入されるだろう」
「ねぇ治ちゃん、葉月が来るって事は…」
太宰は葉琉が言葉を言い終える前に手で言葉を制した。
「その先は言わないでくれ給え。考えたくもない」
葉琉の考えは当たっているのだろう。太宰はとても厭そうな表情をしている。
「諦めなよ。首領の厭がらせじゃない?」
ふふっと笑う葉琉に太宰は現実逃避に走り「明日など来なければいい」と始まった。流石の葉琉も呆れ顔だ。
「もう!うだうだ言っても仕方ないでしょ。中入ろう」
太宰の背中を押して中に戻って行った。
この調子の太宰は翌日の朝まで続いた。