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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第12章 双つの黒と花の役割


目を開けると白い天井が見えた。

(あれ…いま何か聞こえたような…)

「気が付いたかい?」

「……治ちゃん?」

寝台の横で葉琉に声を掛けたのは太宰だ。段々と記憶が蘇って来た。

「治ちゃん!街は!?詛いは!?」

勢い良く起き上がろうとした処を太宰に止められ、しーっと指を口に中てている。

「街は無事だよ。君達のお陰で敦君とも合流できた」

葉琉は「よかった」と力が抜けた。窓から入る陽を見ると紅くなっている。もう夕刻なのだろう。横をみるとまだ葉月が寝息を立てていた。こんな近くで姉の顔を見たのは本当に久しぶりだった。

「本当は葉月ちゃんを姐さんのいる部屋に移す予定だったのだけど、葉琉が手を離さなくてね」

太宰は笑いながら葉琉が握っている葉月の手を指した。葉琉は起こさないように手を離した。

「敦君がとんでもない提案をしてね。いまは社長と話し込んでいるよ」

「とんでもない提案?」

「ポートマフィアとの協力だそうだ」

えぇ!?と声に出そうとしたが、太宰に口を塞がれる。

「葉琉の反応は本当に判りやすいね」

くすくすと笑う太宰にそれどころではないと突っ込みを入れたくなった。

「まだ決定ではない。社長と敦君の話し合いは続いているのだよ」

葉琉は口元の太宰の手を退けると「如何するの?」と尋ねた。太宰は少し悩むと「社の方針なら従う他ない」と諦めの様子だ。

トントンー

扉が開き、敦が顔を出した。

「太宰さん、一寸いいですか?あ、葉琉さん!目が覚めたんですね」

敦が安心した様に微笑んだ。

葉琉は「心配してくれて有難う」と笑顔で告げた。太宰はそれを横目で見てから「処で敦くん。私に用事かね?」と尋ねた。

「あ、太宰さん。社長がお話があるそうです」

「社長が?」

太宰はふむと考えてから「判った。行こう」と言って席を立った。

「葉琉、少し行ってくるよ。葉月ちゃんを頼むよ」

「行ってらっしゃい」

太宰は敦と一緒に部屋を出た。葉琉は太宰が座っていた椅子に座り、葉月が起きるのを待っていた。
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