第11章 三組織異能力戦争
「組合の人間に植物と感覚を共有させる人がいるって言ってた。その力とQの能力を合わせたってこと!?それで街中の人に痣がでたんだ…」
葉琉は普段考えることは苦手でも、作戦や行動パターンを考えるのは割と得意だった。葉月は葉琉の言葉に頷いた。しかし、矢張り判らない点もある。
「でも、何故【漂泊者】を?」
素直に疑問を打つけてみる。葉月は厭な顔一つせずに答えてくれた。
「敦君、だっけ?その子も組合に捕まってるそうね。太宰さんは彼が人形を持って落ちてくるのを待ってるみたい」
「そっか。凍らせた時の中を動けるのは私達と治ちゃんだけ。敦君が何処に落ちてくるか判らないんだ」
「その通り」
葉月は空を見上げた儘言った。その時、遠くから爆発音と煙が上がった。
「……始まったようね」
葉月の言葉の後に更に煙が上がった。所々で悲鳴の様なものまで聞こえてくる。あまりの光景に葉琉は身震いした。ふと葉月を見ると額に汗が滲んで険しい表情をしていた。焦って居るのだと一目で判った。葉琉は葉月が見上げている方角とは違う処を見上げた。
「国木田君も始まったよ」
国木田を置いて戻ってきた太宰も再び空を見上げる。「国木田さんは大丈夫なんですか?」という葉月の心配を「大丈夫大丈夫。何か色々叫んでたけど、録画してきたし」と別の意味で心配を増やす太宰に、葉琉は頭を抱えそうになった。国木田に同情していると「見つけた!」という太宰の声が聞こえた。
「葉琉、葉月ちゃん。頼めるかい?」
「太宰さん。私達も久々なため、何れだけの時間を止められるか判りません。ですが、ギリギリまでは止めておきます」
太宰は頷き、走り出した。葉月は葉琉に手を差し出し、葉琉もそれに応えて葉月の手を握った。
「「過去より来りて未来を過ぎ久遠の郷愁を追ひくもの。
いかなれば滄爾として時計の如くに憂い歩むぞ」」
二人を中心に冷気が走った。それは凄まじい速度で広がり、世界は凍りついた。