第11章 三組織異能力戦争
再戦かと思われた時、カメラの音響から社長が声がした。
『答えよ、ポートマフィアの特使。貴兄らの提案は了知した。確かに探偵社が組合の精鋭を挫けば、貴兄らは労せずして敵の力を殺げる。三社鼎立の現状なればあわよくば探偵社と組合の共倒れを狙う策も筋が通る』
中也はその声ににっこりと笑う。
「だが、お宅にも損はない。だろ?」
『この話が本当にそれだけならばな。何を隠している』
「何も」
『この件の裏でマフィアはどう動く?』
「動くまでもねえよ」
中也の言葉にいち早く反応したのは乱歩だった。
『やぁ素敵帽子君、組合の御機嫌二人組に情報を渡したのは君かい?』
「あ?……そうだが」
『組合は僕達と同じように罠を疑った筈だ。しかし彼等は食いついた。余りにも【餌】が魅力的だったからだ。何で組合を釣った?』
中也の顔に不敵な笑みが零れる。そしてもう一枚の写真をカメラに映した。
『事務員を【餌】にしただと!?』
「直ぐに避難すりゃ間に合う。その上組合はお宅等が動く事を知らねぇ。楽勝だ」
「つまり…」と葉琉が言葉を発した。
「事務員の居場所を探り出して組合に密告して、更に其れを探偵社に密告。マフィアは汗ひとつかかずに二つの敵を穴に落としたって事ね」
「穴だと判っていても探偵社は落ちずにはいられねぇ。首領の言葉だ」
それだけ伝えると中也は身を翻し元来た道を戻って行く。
「ねぇ、中也。この戦争、葉月は如何してるの?」
中也は一度も立ち止まり顔だけ振り向いた。
「ンなこと言える訳ねぇだろ。だが、一つだけ言えることは手前等ン処の事務員の居場所を特定したのは葉月だ。彼奴は自分の立場を判ってる」
それだけ告げてまた歩き出した。