第11章 三組織異能力戦争
与謝野と賢治は隧道の途中で特使が来るのを待ったいた。遠くから鼻歌が聞こえ、二人は構えた。
中也は二人に気付くと溜息を吐いた。
「たった二人か。見縊られた話しだぜ」
「探偵社は事前予約制でねェ。対応が不満なら余所を中りな」
「マフィアが敵拠点で暴れるのに予約が要ると思うか?」
「はい!要らないと思います!」
賢治の何時もと変わらない返事に拍子抜けした様に与謝野は「暴れたきゃ好きにしな」と言った。
「けど、アンタは暴れに来たんじゃない。だろ?」
中也は「ほう」と驚いた表情を見せた。
「何故そう思う?」
「ウチは探偵だよ。訪客の目的位、一目で見抜けなくて如何するンだい」
「お宅の社長は?」
中也の質問に与謝野は「そこだよ」とカメラを指した。中也はそのカメラに向かって一枚の写真を見せた。
「うちの首領からお宅等に贈品だ」
その写真には組合の連中と思われる二人の男の姿が写っていた。
「奴等を『餌』で釣った。現れる場所と時間も此処に書いてある。煮るなり焼くなりご自由にどうぞ。こんな好機滅多に無ぇだろ?憎っくき組合に一泡吹かせてやれよ」
それを聞いていた与謝野は「成る程」と笑い出した。
「確かに唆られる案だね。けど、もっと善い案があるよ。アンタの手足削ぎ落としてから、何を企んでるか吐かせるってのはどうだい」
「そりゃ凄え名案だ。やってみろよ」
すっと与謝野が横にずれると後ろから葉琉が姿を現した。
「…ほう。少しは骨がありそう…」
中也の言葉を遮る様に葉琉は無言で詰め寄った。そして、直ぐに蹴りを入れる。中也はそれを腕で防御して止めた。
「相変わらず速さだけは一丁前だな」
「そりゃあどーも」
中也はニヤリと笑うと「矢っ張り伝言人は性に合わねぇ」と言って葉琉の脚を腕で弾き拳を振りかざす。
「仕事はこうじゃねえとなァ」
二人の戦闘が始まった。打拳や蹴りを躱し乍、隙をみて技を繰り出す。過去に何度も闘った。お互いの動きは手に取るように判る。だが、この二人の強さは同じでは無い。過去の闘いで練習とはいえ葉琉が勝てた事は一度も無いのだ。そう、あの時と同じなら…