第11章 三組織異能力戦争
攻勢が出て行った後の拠点は有難い事に何事もなく時間だけが過ぎて行った。乱歩は「暇だ〜外出たいぃぃ」と退屈そうにしていると、与謝野は冷静に「今出たらマフィアか組合に頸を捥り取られちまうよ」と応える。
「葉琉、監視映像に異常はないか」
「今の処は退屈な映像ばかりです」
「この講堂は通常入り口が存在せず、侵入には地下の廃路線を通る他無い」
「道中は罠も満載だしねェ。この地形で侵掠戦なんて、余程の大軍隊でもなきゃ二の足を踏むさ」
葉琉の上から画面を覗くように与謝野が言った。
「戦争なんて退屈だよ!駄菓子の備蓄は半日で尽きたし…」
乱歩は未だぶーぶーと言っている。そして思いついた様に顔を輝かせ、葉琉が見ていたパソコンを自分の方へ向けた。
「与謝野さん此れで花札やろう」
「おやおや何賭ける?」
与謝野も乗り気だ。葉琉はその二人の様子を微笑ましく見ていた。直後、乱歩の表情がガラリと変わった。その様子にいち早く気が付いた与謝野が「如何したンだい?」と尋ねる。乱歩は帽子を被り直すと「社長」と声を掛けた。
「攻勢を呼び戻した方が良いよ」
「敵か?襲撃規模は何人だ?」
言うより早しと画面を社長に見せる。葉琉も画面を覗き込む。乱歩は「一人だ」と答えた。その瞬間、画面に映っていた男はニヤリと笑い、カメラの動作は此処で潰えた。
葉琉は息を呑んだ。画面に映っていた男は葉琉もよく知っている人物で、自分の師でもあるポートマフィア五大幹部の一人、中原中也だった。
「監視映像弐番と伍番が停止」
「自動迎撃銃座を起動せよ」
まるで散歩でもするかの様に鼻歌混じりで歩く中也に一斉に照準が定まった。そして直ぐに発砲された。弾は間違いなく中也を狙っていたが、中ることはなく全て迎撃銃に返された。
『特使の摂待役がこんな木偶とは、泣かせる人手不足じゃねぇか、探偵社。生きてる奴が出て来いよ』
カメラに向かい挑発を煽る中也に皆息を呑んだ。
「社長」
「乱歩、お前も私と同意見か」
乱歩はコクリと頷いた。