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明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第11章 三組織異能力戦争


直後、トントンと扉を叩く音が聞こえた。

「もうそんな時間か。忙しない男よのう」と扉に向かって言う紅葉に葉琉は「時間?」と聞き返した。

「私等はいま戦争中じゃ。敵幹部と親しいのも問題だろうと、太宰めが内緒で時間を取ってくれたのじゃ」

「…そうだよね」と俯く葉琉。

「葉琉よ、鏡花の事は彼奴に頼んだ。葉琉も鏡花を妹の様に可愛がってくれていたと聞いとる。鏡花を任せても善いか?」

紅葉は何処か寂しそうに尋ねてきた。葉琉は顔を上げて紅葉を見る。紅葉もやり方は違えど鏡花を大切に想ってきたのだろう。まるで子を頼む母の様に葉琉を見ていた。

「うん。必ず鏡花ちゃんを助けるよ」

「うむ、頼んだぞ。さぁ、もう行くのじゃ」

名残惜しそうに葉琉を放す紅葉に葉琉は「姐さん、またね」と告げて部屋を出た。



部屋を出て直ぐ横に太宰が待っていた。

「少ししか時間を取れなくて済まないね」

葉琉は首を横に振り「治ちゃん、有難う」と告げた。太宰は優しく微笑んで「行こうか」と葉琉を促す。不意に紅葉の言葉が頭を過ぎった。

(治ちゃんの、想いって…)

「ねぇ、治ちゃん」

葉琉は太宰を見上げた。太宰も「何だい?」と葉琉を見る。しかし、次の言葉が出てこなかった。何と聞いたら良いか判らなかったのだ。

「否、何でもない」

「何だい?気になるじゃないか」

むっと唇を尖らせる太宰に思わず笑ってしまった。

「何でもないって。ほら、行こう」

太宰は葉琉に差し出された手を取って機嫌を直した。
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