第11章 三組織異能力戦争
葉琉達は事務所に戻ると国木田からの指示で荷物整理に追われた。
不意に国木田の電話が鳴り、画面を確認した。
「む、社長からだ」と直ぐに耳に中る。
『進捗は如何だ』
「ご指示の通り事務員は県外に退避させました。次は何のように」
『調査員は全員社屋を発ち旧晩香堂に参集せよ』
「晩香堂?…会社設立前に社長が拠点にしていたと云う?」
『あの講堂は極限られた人間しか知らぬ。拠点を秘匿せねば数で勝る敵に圧し潰される……御訪客の様だ。二人…否、三人か』
「社長?社長!」
急に電話が切れ、画面を確認する国木田を敦は荷物運びをし乍「如何したんですか?」と尋ねた。
「社長との通話が…敵襲か?」
「え!?なら疾く救援に」
焦る敦に「それは大丈夫だよ」と葉琉が現れた。
「ねぇ、敦君。私の手首掴んでみて」
「へ?」
「ほらほら」
恐る恐る敦が葉琉の手首を掴むと一瞬の内に敦の躰が宙を回った。
「此処に来て最初に教わった技だよ。私には剛の強さがあっても柔の強さがなかったからね。達人ともなれば凡百体勢から相手を投げ飛ばせるよ。因みに、兄弟子さんでも未だに師匠から一本も取れてないんだ」
国木田が眼鏡を指で直している。敦は「な、成る程」と目を丸くしていた。
「ねぇ、何してるの?」
声のした方を向くと、黒い笑みを浮かべた太宰が立っていた。
「ねぇ、敦君。なんで葉琉と手握り合ってるの?」
敦は慌てて「済みません!」と手を放した。太宰の言動に快く思わなかったのは葉琉だ。
「なぁに?治ちゃんも投げて欲しかったの?言ってよー」
「え?」
じりじりと太宰に詰め寄る葉琉。先刻までの黒い笑みとは違い、焦りの混じった笑みで葉琉を止めようとする。
「じ、冗談だよ、葉琉ちゃん。ほら、そんなぁぁああああああ!」
ドーンッーー
という鈍い音が事務所に響いた。