第11章 三組織異能力戦争
「あれ?敦君、中に居たんじゃなかったの?」
太宰と紅葉の居る部屋の前には敦がいた。敦は葉琉に声を掛けられると振り返った。
「先刻、マフィアの人が目を覚まして、太宰さんに此処は良いからと追い出されまして」
「あ…なるほど」
「葉琉さんは太宰さんに用事ですか?それとも…」
敦は俯いて言葉を締めた。葉琉にも続きは容易に見当がついた。
「敦君…」
「太宰さんも葉琉さんも…あの人の所為で鏡花ちゃんは…!」
敦の怒りはもっともだ。葉琉も敦の立場なら同じ事を思っただろう。
「確かに姐さんがやった事は許される事じゃない」
不意に紅葉との思い出が浮かんだ。
ーー葉月、葉琉。
「私も…許せない。鏡花ちゃんの事も」
ーー此方へおいで。
「でも…恨む事は出来ないの。だって姐さんは私達に手を差し伸べてくれたから…!」
ーー葉月、葉琉。其方等は私の宝じゃ。
「ごめんね、敦君。ごめんね…」
敦はそれ以上何も言わなかった。太宰と葉琉が元マフィアなのは知っていたのだろう。其れについても聞かれなかった。
「葉琉さん、謝らないで下さい。…葉琉さんを責める心算はないんです。だから、謝らないで下さい」
「戻りましょう」と敦に促され、二人で事務所に戻って行った。