第11章 三組織異能力戦争
重傷を負っていた三人は与謝野の能力で外傷は完治した。しかし、それと同時に敦と国木田には精神的な傷が残った様だ。暫く机に突っ伏したまま、動けなくなっていた。葉琉は黙って椅子に座っていた。
「全く、腑甲斐無いねェ。妾の能力が無きゃ今頃揃って土の下だよ」
与謝野の言葉に誰も何も答えない。答える気力も無いようだ。
そこへ社長がやって来た。
「具合は如何だ」
国木田は勢い良く顔を上げた。
「社長、申し訳ありません。俺が居ながら」
「佳い。少し出る」
社長はそう言うと勢いよく扉を閉めて、出て行った。
「はぁ、ありゃ相当鶏冠に来てるね」
与謝野が溜息混じりでその様子を見ていた。
社長が出て行った後、敦が「太宰さんの様子見てきます」と部屋を出た。太宰は今、意識が戻っていない紅葉と一緒にいる。葉琉は紅葉と逢う勇気が無かった。あんなに尽くしてくれた紅葉になにも告げずにマフィアを出たのだ。どんな顔して逢っていいのか判らなかった。そして、鏡花を取り戻そうと襲ってきたのも紅葉だ。間接的にだが、鏡花がいなくなる原因にもなっていた。鏡花を可愛がっていた葉琉からすると、とても複雑な気分だった。
「なンだい。心配かい?」
気付くと与謝野が向かいに座っていた。
「与謝野先生。何だが頭がぐるぐるします」
「そりゃァ、妾には治せないモノだよ」
「ですよねぇ」と葉琉は俯いた。煮え斬らない様子の葉琉をみて、与謝野は溜息を吐いた。
「悩むなんて性に合わないンだろ?とりあえずやってみればいいさ。アンタにはそれがお似合いだよ」
葉琉は決心した様に立ち上がった。
「そうですね。私には合いませんでした」
何時の間にか笑っていた葉琉に与謝野もつられて笑っていた。「与謝野先生、有難う御座います」と告げて、葉琉は太宰と紅葉が居る部屋へ向かった。