第11章 三組織異能力戦争
探偵社に着く頃には、鏡花は大分落ち着いた。唯、まだ少し震えている。葉琉は鏡花を椅子に座らせて、太宰に駆け寄って行った。
「治ちゃん、一寸いい?」
鏡花の様子からただ事ではないと思ったのか、何も言わずに太宰はついて来た。事務所を出て直ぐの廊下で葉琉は話し始めた。
「先刻、首領に遭ったの。たぶん、例の消えた建物の件を追っていたんだと思う。私や鏡花ちゃんに気付いてたけど、特に何も言われる事なく去って行ったよ。最初から危害を加える心算は無かったみたい」
「それで鏡花ちゃんはあの様子なのだね」
葉琉は頷き、太宰は少し考え始めた。
「明日、鏡花ちゃんの初任務の予定があるのだけど、一人では行かせずに敦君を同行させよう」
「私も…!」
身を乗り出して主張する葉琉を太宰は片手で抑えた。
「葉琉、目を付けられているのは君も同じだ。フィッツジェラルドが知っていた様に、君達の能力は一部では有名だ。何時標的に変わるかも判らない」
「迎え撃つだけだよ」
「葉琉…」と呟き乍、太宰は葉琉の肩に頭を埋めた。
「葉琉が強い事は百も承知だ。でも…君が狙われるのではと考えるだけて耐えられないのだよ」
葉琉は太宰の頭を撫でる様に手を乗せた。
「如何したの?治ちゃん。今日は随分と甘えん坊だね。判ったよ。明日は敦君に任せるよ」
太宰は小さく「有難う」と呟いた。