第11章 三組織異能力戦争
「この会社を買いたい」
社長と葉琉は目を見開いた。
「勘違いするな。この社屋にも社員にも興味はない。あるのは一つ」
「……真逆」
「そうだ、『異能開業許可証』をよこせ。この国で異能者の集まりが合法的に開業するには、内務省異能特務課が発行した許可証が必要だ。連中を敵に回さず大手を振ってこの街で探し物をするにはその許可証が…」
「断る。頭に札束の詰まった成金が、易々と触れて良い代物では無い」
社長とフィッツジェラルドは睨み合った。先に言葉を発したのはフィッツジェラルドだった。
「いくら君が強がっても、社員が皆消えてしまっては会社は成り立たない。そうなってから意見を変えても遅いぞ」
「ご忠告、心に留めよう。帰し給え」
「また来る」と立ち上がるフィッツジェラルド。部屋を出ようとした時、くるりと振り返った。
「明日の朝刊にメッセージを載せる。よく見ておけ親友。俺は欲しいものは必ず手に入れる」
フィッツジェラルドは社長の後ろにいる葉琉を見て思い出したかの様に尋ねてきた。
「君が『時の旅人』かね?」
「随分古い名をご存知のようですね」
「今回、君は標的ではない。しかし、次に会う時は判らんぞ」
「お好きにどうぞ。敵と認識した時点で全員叩き潰します」
「……怖いお嬢さんだ」
そのままフィッツジェラルドと二名の男女は部屋を出て行った。
扉が閉まると葉琉は塩の入った袋を取り出した。
「社長、塩撒いてやりましょう」
「…うむ」
「よし、やるよ!ナオミちゃん!」
「はい!」
二人は応接室の扉に向かい塩を撒いた。社長はそれをお茶を啜りながら見守っていた。
その後葉琉は国木田にこっ酷く怒られた。