第11章 三組織異能力戦争
「おい、太宰。早くマフィアに囚われた件の報告書をだせ。葉琉はもう出したぞ」
国木田の言葉に太宰は再び敦の方を向く。
「敦君、今日は君に報告書の書き方を教えようと思う」
「こ…この流れでですか?」
流石の敦も騙されない。葉琉はその様子を、鏡花とお菓子を食べ乍見ていた。
「君にも関わる話だよ、敦君。君に懸賞金を懸けた黒幕の話だ」
「判ったんですか!?」
「マフィアの通信記録に依ると、出資者は『組合』と呼ばれる北米異能集団の団長だ」
その話を聞いていた国木田が口を挟んだ。
「実在するのか?組合は都市伝説の類だぞ。構成員は政財界や軍閥の要職を担う一方で、裏では莫大な資金力と異能力で数多の謀を底巧む秘密結社……まるで三文小説の悪玉だ。第一そんな連中が何故敦を?」
太宰も其れ迄は判っていない様だ。「巧く相手の裏をかけば…」
と言葉を発している最中、葉琉が急に立ち上がった。
「葉琉?」
「た、大変です!」
太宰が葉琉を呼ぶのと慌てた谷崎が飛び込んで来るのはほぼ同時だった。気付くと葉琉は窓から外に身を乗り出している。直後、外から轟音が響いた。社にいる職員は皆んな窓から外を伺った。
「葉琉の野性の勘は素晴らしいね」
太宰は苦笑を浮かべ乍、窓の外の光景に目をやる。探偵社ビルの前の道路にはヘリコプターが停められ、中から3名の男女が降り立った。
太宰は「先手を取られたね」と呟いた。
「国木田君、お客様だ。社長に伝えて欲しい。葉琉、あまり気が進まないのだが…」
「判ってる。社長に何も無いように待機してる。国木田君が居るより女の私が居る方が相手も油断すると思うし。ナオミちゃん、私と一緒に来てもらっていい?」
谷崎と一緒にいたナオミは頷く。歩き出そうとした葉琉の服の裾を鏡花は掴んだ。
「!?鏡花ちゃん?」
「…私も…」
葉琉は微笑み乍、鏡花の頭を撫でた。
「向こうも態々こんな堂々と闘いに来たわけじゃ無いと思うし、私はもしもの保険だよ。鏡花ちゃんは此処で、もしもに備えてて」
鏡花は渋々頷いた。葉琉は目線を鏡花から太宰に向ける。太宰は「気をつけて」と言って葉琉とナオミを送り出した。