第11章 三組織異能力戦争
出社するなり敦の表情は疲れ切っていた。
「同棲なんて聞いてませんよ!」
「部屋が足りなくてねぇ。それに、新入り二人には家賃折半が財布に優しい」
太宰は何時もの調子で飄々と答える。「しかし」と敦は納得できない。
「彼女は同意しているよ。ねぇ」
鏡花は淡々と「指示なら」と答える。
「でも、同性同士のほうが何かと便利かと…。ほら!葉琉さんとか!鏡花ちゃんとも仲が良いですし!」
敦は報告書を仕上げていた葉琉を指した。
葉琉は「私は別に構わないよ〜」と手をヒラヒラと振っている。その様子を太宰は不服そうに見る。そして「それは私が困る」と言った。
「葉琉との食事は私にとっての唯一の愉しみなのだよ!敦君は私と葉琉の二人の時間なんて要らないと云うのかい?」
太宰は大袈裟に泣く真似をしている。国木田は呆れ乍「太宰は毎日来てるのか?」と葉琉に尋ねた。葉琉は「毎日じゃないけど、殆どいるかも」と答えた。
太宰は泣き真似を止めると「判らないかい、敦君」と言って敦を連れてヒソヒソ話しを始めた。
「マフィアを追われ縁者もない彼女は沼の中の様に孤独だ。それに裏切者を処する為、組織の刺客が来るやもしれない。独り暮らしは危険だよ。葉琉も強いとはいえ女性だ。適任とは言えない」
「た…確かに」
「君が守るんだ。大事な仕事だよ」
「判りました!頑張ります!」
太宰と敦の様子を見ていた国木田は「太宰は何をしているんだ?」と葉琉に尋ねる。葉琉は「さぁ?また敦君で遊んでるんじゃない?」と答えた。