第9章 大切にするが故に
ーー翌朝、探偵社ーー
「太宰が行方不明ぃ?」
朝から駆け込んで来た敦の報せに、国木田は興味が無さそうに答えた。
「電話繋がりませんし、下宿にも帰ってないようで」
「また川だろ」
「また土中では?」
「また拘置所でしょ」
国木田、賢治、乱歩は続けて答えた。やはりあまり興味が無いようだ。
「しかし、先日の一件もありますし…真逆マフィアに暗殺されたとか…」
「阿保か。あの男の危機察知能力と生命力は悪魔の域だ。あれだけ自殺未遂を重ねてまだ一度も死んでない奴だぞ」
確かにその通りだ。だが、それは太宰だけの場合だ。
「でも…葉琉さんの姿も見えないんです…!」
静まり返る一同。国木田は漸く考え始めた。
「確かに、葉琉は遅刻は多いが無断で休むような事はなかった」
「太宰に誘拐されてるんじゃない?」
「あー」
乱歩の言葉に頷く賢治。敦は呆れ顔で尋ねた。
「皆さん、太宰さんを何だと思ってるんですか」
「変態」
「過保護ですかね」
「ストーカー」
敦は微かに頭痛を感じた。だが、やはり心配なようだ。敦が言葉を発しようとした時
「ボクが調べておくよ」
「!谷崎さん、無事でしたか!」
「与謝野先生の治療の賜物だな。それで谷崎、何度解体された?」
谷崎の表情が見る見るうちに青くなっていく。そして小さく「四回」と呟いた。事情を知らない敦を除く三人はあーー。と同情の目を向けていた。