第9章 大切にするが故に
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目を覚ますと陽が高くなっていた。携帯には国木田からの着信履歴が沢山…そう、葉琉は寝坊したのだ。
急いで飛び起きて探偵社に向かった。
ビルの入り口で慌てて飛び込んでいく敦に会った。そういえば、探偵社の方が騒がしい。
「敦君、如何したの?」
「あ!葉琉さん!探偵社にマフィアの連中が…!」
敦の言葉で葉琉も急いで階段を駆け上った。敦が勢い良く事務所に飛び込む。
「やめろっ!」
目の前で男性が宙に浮いて倒される。その男はポートマフィアの異能者の一人、広津だった。
(あ〜広津さん)
葉琉は頭を抑えて眉間に皺を寄せた。他にも銀や立原と、葉琉の顔見知りが転がっていた。
「おお、帰ったか。勝手に居なくなる奴があるか!ん?後ろにいるのは葉琉か?お前も何時だと思っているんだ!見ての通りの散らかり様だ、片付け手伝え」
広津を投げ飛ばしたのは国木田だ。国木田は広津の腕を捻り上げ乍言った。
「国木田さーん、こいつら如何します?」
「窓から棄てとけ」
賢治の質問に淡々と答える国木田。ブツブツと何かを言い乍、手帖を眺めている。
賢治はマフィアの山を次々と窓の外へ投げ飛ばしていった。
敦は入り口に立ったまま呆然としている。そんな敦の肩を葉琉はポンと叩き、いつもの事だから。と伝えた。
「国木田くーん。僕そろそろ"名探偵"の仕事に行かないと」
乱歩がひょっこり現れた。
「あぁ、こいつに手伝わせます」
国木田はぽかんと突っ立っている敦を指す。そして、敦に歩み寄り、肩を叩いた。
「おい、呆けてないで準備しろ。葉琉、お前は太宰を探して乱歩さんと合流しろ。どうせその辺の川を流れてる」
「はーい」
葉琉は返事をして直ぐに探偵社を出て、太宰探しに出た。