• テキストサイズ

明るみの花【文豪ストレイドッグス】

第9章 大切にするが故に


如何やって辿り着いたか判らないが、私は寮の部屋にいた。ふと思い出される、四年ぶりに見た姉の姿。元気で良かったと云う思い半分、罪悪感が半分と心を埋めていた。

ガチャリー

鍵を閉めた筈の扉が開く。入ってきたのは治ちゃんだ。

「葉琉、落ち着いたかい?」

「うん。……治ちゃんは知っていたの?」

治ちゃんは隣に座った。

「ポートマフィアが関わっていることはね。でも、それは葉琉も気付いていただろ」

「葉月や、芥川君が関わっていた事は?」

「それはあの場に行って知った事だ」

「本当に?」

私は治ちゃんを見つめた。治ちゃんも私から目を離さなかった。

「私は葉琉に嘘は吐かないよ」

嘘吐きーー私は心の中で呟いた。

「谷崎君達を直接傷付けたのは芥川君とあの依頼人さん?」

「葉月ちゃんならあそこ迄はしないと思うよ。たぶん、四肢を撃ち抜いて動けなくして敦君を攫っていっただろうね」

ふふっと笑って治ちゃんは言った。それでも充分怖いよ、とつられて笑ってしまった。

「でも、あの場に居たのは確かだから、葉月が関係ない事はない。谷崎君達には申し訳ない事したなぁ」

「葉琉が気に病むことは無いよ。行なったのは葉月ちゃんであって葉琉じゃない」

「…うん。判ってる」

治ちゃんは私の頭を撫でた。そして小さくごめんねと呟いた。この時、治ちゃんが何を考えているか判らなかったが、何かを企んでいる事は判った。しかし、私は何も聞かなかった。

「却説、ご飯にしようか。葉琉」

「ビーフシチュー作ってないよ」

「葉琉の作ったご飯なら何れも好きだよ」

にっこりと笑う治ちゃんをみて、つられて笑いながら台所へと向かった。
/ 283ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp